退去費用でカモられるな
賃貸を出るとき、「壁紙が汚れてますね〜」「全体クリーニングが必要です」「床にキズがあります」と言われて、見積書には10万、20万……下手したら30万なんて数字が載ってくる。で、なんとなく「そういうもんか」と思って払ってしまう。
それ本当に全部、払う必要があるお金なんでしょうか?
私は9割くらいの人が払わなくていい費用を払わされていると思っています。
というのも、日本にはちゃんと「退去費用はこうしましょう」というガイドラインがあるんですよ。でも、それを知ってる人はほとんどいない。オーナーも管理会社も、そこに付け込んでくるわけですね。
知識がないと合法的にカモられる、ということ。
この記事では、そんな理不尽な退去費用に対抗するための知識をまとめています。実際にどう行動すれば、ムダなお金を払わずに済むのか?
法律・ガイドライン・判例……ちゃんとした根拠にもとづいて、わかりやすく解説しますので、これから引っ越す方、今まさに退去を迎える方、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
原状回復費用とは?
原状回復費用と聞くと、それっぽく聞こえますよね。 でも、これ、実は不動産業界が好んで使う、都合のいい曖昧ワードだったりします。
「原状に戻す」と言われてどう思いますか?多くの人が「借りたときと同じ状態に戻すこと」と受け取ってしまう。でも、それ大間違いです。
原状回復とは「通常損耗や経年劣化を除いた損傷の修繕」のことです。
これ、国土交通省が2004年に発表し、2020年に改訂された『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に明確に書かれています。
具体的にはこうです。
- フローリングの日焼け→ 借主の責任ではない
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- 壁紙の自然な変色→ 借主の責任ではない
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- 家具設置による軽い凹み→ 借主の責任ではない
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それなのに、こういった自然な劣化を理由に「クロス全部貼り替えですね」と平然と言ってくる。
借主がガイドラインを知らないと見るや「慣例ですから」「他の方も払ってます」などという言葉で包囲してくる。
ここでハッキリ理解しておきたいのが、民法第400条や民法第415条の考え方です。
- 民法第400条(債務の本旨)
- 賃貸借契約における借主の義務は“通常の注意義務”に基づく使用のみ。
- 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
- 故意や過失があった場合のみ借主に損害賠償義務が生じる。
一方的に消費者(借主)に不利な特約条項は「無効」とされます。(消費者契約法第10条)
仮に契約書に「退去時にクロスを全張り替え」と書かれていても、その条文が合理性に欠けるなら無効になる可能性があるんです。
業者やオーナーが何と言おうと、ガイドラインと法律があなたの味方です。
重要なのは、原状回復という言葉のイメージに惑わされず、具体的に「誰が、何に対して、なぜ費用を払うべきなのか」を論理的に突き詰めること。
請求書の内容が曖昧?「それ、ガイドラインのどこに書いてありますか?」って聞いてみてください。途端にトーンが変わる業者、多いですよ。
なぜ退去時に「ぼったくられる」のか?
退去費用でカモられる理由、それはシンプルにして根深い構造問題です。 なぜ不当に高額な請求が横行しているのか?
オーナー側の思惑
まずオーナー。不動産オーナーの多くは、残念ながら「退去費用=収入源のひとつ」と思っています。
「次の入居者のためのリフォーム? いやいや、前の住人から取れるだけ取っておこう」
そんな感覚です。
実際、退去後の原状回復費を丸ごと借主に請求して、それをそのままリフォーム費に回すどころか、業者との癒着でキックバックをもらっているオーナーもいます。
これ、別にレアケースじゃありません。都心部の築古アパートなんかでは特に顕著。
たとえば「壁紙を張り替えたから3万円」なんて請求してくるのに、実際は3年前にまとめて貼り替えていたりします。 「経費」として計上して、さらに借主にも請求してダブル取り。
完全にアウトな行為ですが、ばれなきゃOKという空気感が業界にはある。
で、問題はそのバレなさです。なぜなら、借主は素人だから。ガイドラインも、民法も見たことない人がほとんど。
だから、オーナーはこう考えます。
「とりあえず請求してみて、払ってくれたらラッキー」
これが実態。正当な費用かどうかなんて二の次なんですよ。
管理会社・立ち合い業者の手口
でもね、もっと悪質なのはこっち。管理会社と立ち合い業者です。
ここ、マジでプロの顔した詐欺師みたいな連中が混じってます。退去立ち会いの場で、彼らが開口一番に言うのはだいたいこうです。
「あ〜、これはクロス全面張替えですね」
専門用語を並べて素人を煙に巻くのは常套手段。 そして最大の問題は、サインを求めてくること。
退去立ち会いでその場で請求書を出し、即座にサインを取ろうとするのは、もはや悪質業者のテンプレ。
請求明細はあいまい、説明も不十分、写真も提示されないのに、「これが通常ですから」と押し切ろうとする。しかも言葉遣いはやけに丁寧。だからこそタチが悪い。
実際、全国の消費生活センターにはこうしたトラブルが大量に報告されています。 中には、請求額があまりに高額なため、裁判沙汰になるケースも。
そして、業界はこう言い訳します──「借主がサインしましたから」
そう、これが全てのからくりです。サインさせれば勝ち。
だからこそ、立ち会い時のサインは絶対にしてはいけません(そもそも立ち会いなんかに出かけるな)。内容を持ち帰って精査する。それだけで、騙される確率はグッと減ります。
退去費用で損をしないためには、「相手は味方じゃない」とまず理解すること。 管理会社も、業者も、オーナーも、あなたの財布をどう軽くするかしか考えていません。
借主が費用を安くできる5つの根拠と実践法
退去費用でカモられないためには、まずこちらが知識武装する必要があります。つまり、「何が本来の負担義務で、何が不当請求なのか」を明確に把握しておくことです。
自然損耗・経年劣化は借主の責任ではない
フローリングの日焼け、壁紙の変色、家具の跡などはすべて「自然損耗・経年劣化」に該当します。これはガイドライン(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)でも明記されており、借主に費用負担義務はありません。
しかし、管理会社はよくこう言ってきます。 「いや、これだけ汚れてたら取り替えですよね」 「次の入居に支障があるので、借主負担です」
全部、通用しません。 なぜなら、経年によって自然に劣化する部分は、貸主のリスクとして法的に織り込まれているからです。
この理屈を無視して全面張替えを請求してくる業者、ガイドライン違反どころか詐欺の一歩手前です。
故意・過失でも「新品価格」は不要
たとえ借主の過失で破損したとしても、それを理由に「新品価格」で請求されるのは不当です。
業界ではよく原価償却を無視した定価請求が横行しています。たとえば、10年使ったエアコンを壊してしまったとしましょう。 耐用年数が6年とされている場合、そのエアコンの価値はすでにゼロです。
つまり請求があっても 「修理費実費」または「中古相当額」になるのが基本原則。これは、税法(減価償却資産の耐用年数)と民事ルール(損害賠償の相当性)に基づく理論です。
ちなみにクロスやクッションフロアなども6年程度で価値ゼロになります。覚えておくとかなり使えます。
修繕は損傷範囲のみ
業者がよくやる古典的な手口のひとつが一部の汚れ・キズなのに、部屋全体を張り替えた請求をしてくるパターン。
たとえば壁紙にコップのシミを1か所つけてしまった場合、ガイドライン的には「その一面だけ張り替え」で済む話です。
それを、「統一感が必要なので全体を交換します」→「15万円です」なんて請求されたら、完全にアウト。
しかもこれ、実際には張り替えすらされていないケースもある。 業者とグルになって張り替えたフリして請求だけ出してくる。
だからこそ、退去時には写真を残す+請求書の内訳を必ず確認する。 可能であれば、見積書にどの箇所に、どんな作業をするかを細かく書かせるようにしましょう。
火災保険を活用する
これは意外と知られていませんが、多くの賃貸契約で加入が義務づけられている火災保険。その中に含まれていることが多い「借家人賠償責任保険」は、借主の過失による破損・損傷に対して補償してくれます。
たとえば、
- 誤って洗濯機を溢れさせて水濡れしたフローリング
- 家具の角で引っ掻いてしまったクロス
- 子供の落書きやペットの破損
こういったものは、自己負担ではなく保険でカバーされる可能性が高いです。
ポイントは、退去前に気づいて保険会社に申請しておくこと。 退去後に「保険使います」は通らないケースが多いので、タイミングには要注意です。
特約でも無効な条項がある
契約書に「退去時は全面クリーニング」「クロス全交換は借主負担」などと書かれていること、ありますよね。
でも、これ全部が有効とは限りません。
なぜなら、消費者契約法第10条には「消費者の利益を一方的に害する条項は、無効とする」とあります。
つまり、借主に過剰な負担を強いる特約は、たとえ書面に記載されていても、裁判で争えば無効になる可能性が高い。
「全部借主のせい」は契約書に書いたところで通用しないんです。
こうした特約を盾に請求してくる管理会社には、「その条項、消費者契約法に照らして有効かどうか検討させてください」 と一言言うだけで、急にトーンが変わることもあります。
以上が、借主が退去費用を正当に抑えるために知っておくべき5つのポイントです。
これらを踏まえて行動するだけで、「ふつうなら30万円です」と言われる請求が、5万円以下で収まることも珍しくありません。
退去に立ち会う必要がない理由─むしろ立ち会うな
退去時に「立ち会いお願いします」って言われて、素直に予定合わせてノコノコ現場に行ってませんか?
これ完全に向こうの土俵に乗せられてますよ。退去立ち合いって、借主にとってはただのリスク。トラブルの温床でしかない。
はっきり言いますが、退去立ち合いに行く=カモがネギしょって登場ってことです。
「立ち会いは義務です」は真っ赤なウソ
「退去時の立ち会いは義務です」この言い回し、業界ではほとんど常套句になっています。
これは事実ではありません借主に退去時の立ち会い義務は一切ありません。物件の明け渡しとは、鍵を返却することで成立する行為であり、それ以上の行動を借主に強制できる根拠は存在しないんですよ。
それにもかかわらず、管理会社や一部の不動産業者は、立ち会いを前提とした進行を当然のように組んできます。日程を指定し、現地に来ることを協力として求める。
この段階で、すでに本来の契約の枠組みから逸脱しているんです。
「立ち会いが当然」「みなさん来てます」といった言い回しもよく使われますが、これらはすべて業者側の都合にすぎません。法律的には義務ではないことを、あたかも契約上の要請であるかのように見せかけて、無自覚な借主を同意の場へ誘導する手口なんです。
こういう現実を知らずに「まあ、行くのが普通だよね」と思っていると、向こうのシナリオにきれいに乗せられて、何万円も余計に払うハメになります。
念のため言っておきますが、「立ち会いは任意ですか?」と聞く必要すらありません。
行かないという判断は、あなたの当然の権利です。
なぜ立ち会いを求めてくるのか?
立ち会いを「当たり前の工程」として押し付けてくる理由ははっきりしています。目的は、現場で心理的な優位を取り、借主からサインを引き出すことにあります。
退去の場では、ある種の段取りが出来上がっています。傷や汚れを確認すると即座に「借主負担ですね」と決めつける。続いて「クロス全面張替えが必要ですね。費用は5万円ほどになります」と金額を提示し、「ハウスクリーニングは契約通り3.3万円です」と積み上げてくる。
そして最後に「こちらにご署名をお願いします」。この一連の流れは、わずか数分で完了します。
この短時間のうちに、借主にできることはほとんどありません。情報の開示もされず、費用の根拠も提示されないまま、その場の空気だけでサインさせられる構造ができあがっているんです。
そしてそのサインひとつで、あとから異議を申し立てるのは不可能になります。
つまり立ち会いって、借主をその場で拘束して、合意という名の自白を取るのが目的なんですよ。
「その場で判断しない」は悪者じゃない
よく「立ち会いを拒否したら心証が悪くなる」とか、「トラブルになるんじゃないか」と心配する人がいます。
でもね、そんな気遣い、向こうは1ミリもしてませんよ?
相手は業務でやってるだけ。あなたが思ってるほど、誠意も誠実さもない。
しかも、自分たちの非を指摘されないように、契約書やガイドラインのグレーゾーンを駆使して押し切ってくるプロ集団です。
そんな相手に対して「角が立たないように…」なんて配慮する必要、ありますか?
ないです。
現場に行かずとも、完全に対応できる
じゃあどうすればいいか?答えはシンプルです。
- 鍵は期限内に返却(これで法的な明け渡し完了)
- 室内の写真・動画をしっかり撮影(証拠保全)
- 立ち会いは不要と連絡(文面でOK)
- 請求書が来たら、ガイドラインと照合して精査
- 不当請求なら内容証明・消費生活センターで反論
これだけで、ぜんぜん問題ありません。むしろ、その場でサインという最大のリスクを回避できるので、圧倒的に安全です。
退去立ち会いは、信頼関係の確認なんてものじゃない。合法的に借主からサインを取るための心理戦です。
ノコノコ出かけて、よくわからないまま言われるがままにサインしたら、後日「あれって払う必要あったのかな…」と気づいても手遅れです。
業者は「いや、サインいただいてますので」で門前払い。だったら、最初からその場に行かない。 それが、もっとも確実な防御策です。
ぼったくられない退去手続きのステップ
退去費用を不当に請求されないためには、正確な手順を踏むことが不可欠です。ただ鍵を返せば終わる──なんて話ではありません。準備の有無で、あとから数十万円単位の損失になるか、0円で終わるかが決まるんですよ。
以下に示すのは、退去までの実務ステップです。ただの“やることリスト”ではありません。手を抜けばカモにされるポイントばかり。厳しくチェックしてください。
入居中にやるべきこと
- 写真を撮っておく(入居時・退去時)
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入居時に何も残していない?それ、業者の言いなりになる準備が整ってるってことです。 壁・床・天井・設備、すべて全体とアップ両方で記録。証拠のない主張は通りません。
- 保険内容を確認しておく
-
加入させられた火災保険、ちゃんと内容読んでますか?「借家人賠償責任保険」が含まれていれば、破損や汚損が保険適用になる可能性があります。 使えるのに申請していない=無駄金を払う原因。
- 過失箇所は早めに補修 or 保険申請
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退去間際に「これ保険でいけませんか?」は通用しません。保険会社は“事故発生から一定期間内”の申請しか受け付けないことが多い。タイミングを逃せば自腹確定です。
解約通知・退去届の注意点
契約終了の通知=退去のスタート。ここを雑にすると、不利な条件を飲まされる流れができあがります。
- 期日厳守は絶対条件
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通知が遅れれば、日割り家賃・延滞費用など余計な支払いが発生します。これは貸主の裁量ではなく、完全に契約ルールです。
- 通知文に潜む地雷に注意
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管理会社が用意したフォーマットを鵜呑みにするのは危険です。「クリーニング費用は全額借主負担とします」など、不当な条項が埋め込まれていることもあります。
- 解約通知に「念のため」の一文を
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「本通知は賃貸借契約に基づく解約の意思表示であり、原状回復費用その他の費用については契約書及びガイドラインに基づき協議するものとします」 書いておくだけで、あとから出てくる勝手な一方的条件を潰せます。
立ち会い対応のポイント
- 録音・録画は当然
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業者が一番嫌がるのがこれ。違法行為が証拠として残る書面や録音が一番防御力が高い。
交渉の場で何が言われたかを記録しておくこと。これは防御ではなく抑止です。録っていると分かれば、業者の態度も変わります。
- 立ち会わないという選択肢
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必ずしも現場に出向く必要はありません。鍵を返却すれば法的には引き渡し完了。立ち会いは業者にとって都合の良い即席合意の場です。無理に応じる義務はなし。
- サインはその場で絶対にしない
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内容を持ち帰って確認する。それだけで「不当な請求を受け入れた」状態を避けられます。現場で押し切られたら、あとから覆すのは難しいんですよ。
鍵の返却と清掃
- 鍵は期限内に返す=最優先
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明け渡し完了は「鍵を返した日」です。逆に言えば、返し忘れれば「居住中」扱いで家賃が発生する可能性もあります。
- 清掃は普通レベルで十分
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プロの清掃?そんな義務はありません。「入居時より著しく汚損している」などの特段の事情がなければ、自分で掃除すればそれで済むんです。払わなくていい金は払わなくていい。
請求書チェックと反論方法
- 内訳が出ていなければ支払うな
-
「一式」や「クリーニング代」など、明細のない請求書に応じる必要はありません。単価と数量が明示されていなければ、根拠として無効です。
- ガイドラインとの照合を必ず行う
-
原状回復ガイドラインには「どこまでが借主負担か」が明確に書かれています。請求内容がそこから逸脱していれば、支払い義務はありません。
- 不当請求は記録をとって外部機関へ
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消費生活センター、弁護士、法テラス、相談先はいくつもあります。「これはおかしい」と思ったら、相手に相談するのではなく、相談される側に話を持っていくんです。
退去は、 あちらは請求のチャンス、こちらにとっては防御です。 それを理解した上で、必要な準備を全部やる。それが、後悔しない退去の唯一のルートです。
保証会社との関係と注意点
退去時、管理会社やオーナーとだけ戦えばいいと思っているなら、それは甘い。もうひとつの本丸があるんです。
保証会社。ここを見落とすと、戦いは終わらない。
退去後、請求書が突然届く。差出人は保証会社。見覚えのある名前に見えても、中身は別物。「○月×日に立替えを行いました。以下の金額をご確認のうえ、お支払いください」と冷たく印刷された文面。
ここで勘違いしてはいけないのは、「保証会社=仲裁者」ではないということ。 彼らの立場は、オーナー側に立つ債権回収業者です。
退去後、オーナーが「借主が支払わない」と言えば、保証会社はとりあえずお金を立て替える。 その時点で、借主に対して債権が移る。そして本気で取り立てに来る。
その内容が正当かどうか? そんなのは二の次です。
彼らがやることは↓こうです。
- 請求書に「原状回復費一式」とだけ書き、内訳は無し
- 電話しても「当社は立替えただけです。内容の異議は元請へ」と押し付ける
- 交渉もせず、「○日以内に支払いがない場合、法的措置」と圧をかける
これに慌てて払ってしまえば、回収完了。 不当請求だったかどうかなんて、彼らにとっては問題ではありません。
保証会社が立替えたという時点で、それは借主の支払い義務に自動で切り替わるわけじゃない。 原状回復費であれ、違約金であれ、法的根拠のある請求でなければ一円たりとも払う必要はありません。
請求が来たら、まず確認すべきは3つ。
- 明細があるか
- 原状回復ガイドラインに照らして妥当か
- 元の賃貸契約書と整合性があるか
このどれかが欠けているなら、スルーしてOKです。
保証会社経由の請求に対してサインを求められる場面もあります。 これは非常に危険。 内容があいまいなまま署名すれば、それが債務の承認とみなされます。
「ただ確認のためです」「印鑑だけお願いします」。この言葉に何の意味もない。 保証会社は、サインさえ取れれば、その後の追い込みを法的正当性で押し通せるからです。
退去後の保証会社対応こそがもっとも厄介な局面です。 気づいた時にはすでに支払う空気が出来上がっています。
保証会社は貸主の代弁者であり、こちらの味方ではありません。 退去後に請求が来たら、まず明細の開示を求めること。そして内容を原状回復ガイドライン・契約書・保険の補償内容と照らし合わせて、少しでもおかしければ突っぱねることです。
「保証会社から請求された=払わなきゃいけない」なんてルールは存在しません。
情報は持っているだけでは意味がない
退去費用で損をしないために必要なのは、知識ですと言いたいところですが、それだけでは不十分なんですよ。
ガイドラインを知っている。契約書も読んでいる。保険の内容も確認した。写真も撮った。
それでも、「皆さんそうしてます」「一律です」と言われれば、反論できずにサインしてしまう人は多いんです。
つまり、知っているだけでは足りないんです。必要なのは、その知識をどう使うか、どう場面に落とし込むかという具体的な判断力です。
- 契約書の中で優先される条項を見分けられるか?
- 保険会社に対して、どの損害が補償対象になるかを明確に説明できるか?
- 請求書の項目ひとつひとつに対して「これは適切か」を見極められるか?
その場で判断し、相手の主張に対して即座に「それは契約と違う」と言えるだけの準備ができているかがすべてです。
困ったときに相談すべき機関はあります。消費生活センター、宅建協会、法テラス、すべて有効な窓口です。 ただし、それは最後の手段であって、本来はそこに行かなくて済むように行動を組み立てることが大事なんです。
退去費用は、情報と判断で大きく変わります。 知っている人が損をしないのではない。 知っていることを使える人が、最後に残る。それだけの話です。